鈴木 健太(36)久しぶりに子供と『ホーム・アローン』を見ようと思ってDisney+で再生したんだけど……あれ? ケビンの声、こんなにお上品だったっけ? もっとこう、生意気でクソガキ感のある声じゃなかった?
その違和感、決してあなたの記憶違いではありません。
あなたが探している「あの頃のケビン」は、現在多くの配信サービスで流れている声優・折笠愛さんのバージョンではなく、「クレヨンしんちゃん」でお馴染みの矢島晶子さんが演じる「フジテレビ版」の吹き替えです。
実は、この「矢島晶子版」は、権利上の理由で動画配信サービスでは一切見ることができません。
この記事では、80-90年代の吹替版をこよなく愛する「吹替シネマ捜査官」の私が、なぜ配信で見られないのかという大人の事情から、廃盤となった伝説のBlu-ray「吹替の帝王」を探し出す方法、そしてテレビ放送を確実に録画するテクニックまで、あなたの記憶にある「最高のケビン」に再会するための全てを解説します。


「なんか声が違う…」その違和感の正体は“バージョン違い”です
再生ボタンを押して数分後、「あれ、ケビンってこんなにお行儀の良い声だったっけ?」と首をかしげませんでしたか?
わかります、そのモヤモヤ。私たちが金曜ロードショーやゴールデン洋画劇場で腹を抱えて笑ったケビンは、もっと生意気で、憎たらしくて、でも愛嬌たっぷりの「あの声」でしたよね。
『ホーム・アローン』には、主に以下の2つの有名な吹き替えバージョンが存在します。
- ソフト版(折笠愛版): DVD、Blu-ray、そしてDisney+などの配信サービスで標準的に使われているバージョン。演技が丁寧で、マコーレー・カルキンの美少年ぶりを引き立てる「正統派」な声です。
- フジテレビ版(矢島晶子版): 1994年にテレビ初放送されたバージョン。アドリブ満載で、「アホ」「ボケ」といった言葉選びも秀逸。ケビンの「クソガキ感」を最大限に引き出した、私たち30代〜40代にとっての「実家のような安心感」のある声です。
つまり、あなたが感じた「コレジャナイ感」は、「ソフト版(折笠愛版)」と「フジテレビ版(矢島晶子版)」という、演技の方向性が全く異なる別物を比較してしまったことによるものなのです。
【結論】: 違和感を感じたら、すぐに配信を止めてOKです。無理に見続けても「あの面白さ」は戻ってきません。
なぜなら、コメディ映画において「声の演技」は面白さの50%以上を占めるからです。私自身、大人になってから「原語版こそ至高」とかぶれてみましたが、結局一周回って「矢島晶子さんの『あ〜ん!』という悲鳴がないとホーム・アローンを見た気になれない」という結論に至りました。あなたのその感覚は、日本の吹替文化が生んだ正しい反応なのです。
なぜ「矢島晶子版」は配信されないのか? 複雑すぎる権利の壁
「じゃあ、Disney+の設定で音声を切り替えればいいんじゃない?」
残念ながら、どれだけ設定を探しても「矢島晶子版」は出てきません。ここには、テレビ放送用吹き替え特有の「権利の壁」が立ちはだかっているからです。


通常、NetflixやDisney+などの動画配信サービスは、権利処理が一本化されている「ソフト版(今回は折笠愛版)」を使用します。
一方、私たちが愛する「矢島晶子版」は、フジテレビが放送のために独自に制作した音源です。これを配信サービスで流すためには、配信会社がフジテレビ側に追加の許諾を得たり、使用料を支払ったりする複雑な契約が必要になります。
ビジネス的な観点で見ると、配信会社にとって「わざわざコストをかけてまで、古い映画の別バージョンの音声を載せるメリットは薄い」と判断されてしまうのが現実なのです。
それでも見たい!「矢島晶子版ケビン」に再会する2つの方法
配信で見られないからといって、諦める必要はありません。現在、「矢島晶子版ケビン」を見る方法は、以下の2つだけ残されています。
| 視聴方法 | 矢島晶子版 | コスト | 難易度・特徴 |
|---|---|---|---|
| 動画配信 (Disney+等) | 月額料金 | 見られません。 配信されているのは全て「ソフト版」です。 | |
| 吹替の帝王 (Blu-ray BOX) | 高額 (中古2〜3万円) | 唯一の完全解決策。 いつでも好きな時に見られるが、入手困難。 | |
| 金曜ロードショー (テレビ放送) | 無料 | 最も現実的。 放送日は不定期だが、日テレは矢島版を採用中。 |
方法1:【至高の選択】伝説のBlu-ray「吹替の帝王」を探せ
もしあなたが、「金に糸目はつけないから、一生モノのケビンを手元に置きたい」と願うなら、2015年に発売された『ホーム・アローン <日本語吹替完全版> コレクターズ・ブルーレイBOX』を探してください。
これは、20世紀FOX(現・20世紀スタジオ)がファンのために発売した「吹替の帝王」シリーズの一つで、矢島晶子版(フジテレビ版)を含む全種類の吹き替え音源を収録した唯一のパッケージです。
探す際は、以下の品番を必ずチェックしてください。通常版のBlu-rayには矢島版は入っていません。
現在は生産終了しており、Amazonやメルカリでは20,000円〜30,000円前後のプレミア価格で取引されています。高いですが、これさえあれば、いつでもあの「クソガキ・ケビン」に会うことができます。
方法2:【現実的な選択】「金曜ロードショー」を待て
「さすがに3万円は出せない…」という方は、日本テレビ系「金曜ロードショー」の放送を待ちましょう。
実は、金曜ロードショーは視聴者の期待をよく理解しており、2021年、2023年の放送でも一貫して「矢島晶子版」を採用しています。
放送は1〜2年に一度のペースですが、無料で、しかも確実に「あの声」で見られるチャンスです。次回の放送が決まったら、「見る用」と「保存用」でダブル録画することを強くおすすめします。配信全盛の時代だからこそ、テレビ録画の価値が輝くのです。
よくある質問:マコーレー・カルキンの地声はどっちに近い?
最後に、よく聞かれる疑問についてお答えします。
- 結局、マコーレー・カルキンの本当の声に近いのはどっち?
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実は、地声に近いのは「ソフト版(折笠愛さん)」の方です。本人の声は比較的高めで、可愛らしいトーンをしています。
しかし、映画としての「コメディ的な面白さ」や、泥棒たちを撃退する時の「痛快さ」を日本人に伝える上では、少しデフォルメされた「矢島晶子版」の演技が最適解だったとも言えます。どちらも素晴らしいプロの仕事であることに変わりはありません。 - 矢島晶子版の相棒(泥棒ハリー)の声優は誰?
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矢島版で泥棒ハリー(ジョー・ペシ)を演じているのは、青野武さんです。「ちびまる子ちゃん」の友蔵おじいちゃん役でも有名ですね。青野さんのコミカルな悪役演技と、矢島さんのケビンの掛け合いこそが、フジテレビ版の真骨頂です。
まとめ:あの頃のケビンに会うために
あなたの記憶にある「最高のケビン」は、間違いなくフジテレビ版(矢島晶子さん)です。配信サービスで見られないのは残念ですが、それはそのバージョンが特別な「テレビの遺産」だからこそ。
今すぐ見たいなら「吹替の帝王(FXXE-1866)」の中古を探す旅へ。気長に待てるなら「金曜ロードショー」の公式サイトをチェックして、次回の放送を逃さないようにしましょう。
ぜひ、お子さんにも見せてあげてください。「パパが見ていたケビンは、もっと面白かったんだぞ!」と胸を張って言える日が来ることを願っています。


映像パッケージ収集家
自宅に2,000枚以上の吹替版収録ソフトを所有。「あなたの違和感は正しい。私たちが愛したケビンは、もっと生意気で最高だった」をモットーに、消えゆくテレビ吹替版の魅力を発信し続けています。

